『蜜約~ラシェルとふたつの白い薔薇』
イラスト8枚入り
トパーズノベルス(2016/06/24 配信)
【著】燈花 
【イラスト】緒田涼歌(敬称略)

蜜約cover

思い出深いデビュー作です。
担当さまには多大なご迷惑をおかけしました💦
美貌の双子との3P。
作者の個人的萌えが滴ります……(笑)
★amazon kindle unlimited対象(2020/12月現在)

【あらすじ】

 舞台は1920年代はじめのフランス。
 ヒロインのラシェルは、エコール・デ・ボザールに通いながら芸術家を目指している。
 画廊に絵を売り込みに行った帰途、偶然に出会った画商の息子・ギデオンに一目惚れするが、
 彼に婚約者がいると知ったラシェルは、きっぱりと誘いを断ってしまう。
 その後、進められた縁談で出会ったのはギデオンと瓜二つの美青年・アベル。
 そっくりな二人の男性の間で、ラシェルの心は揺れ動くが  




【お試し読み】

 一九二二年、四月下旬のフランス、ボルドー郊外  
 夕暮れが迫る西の空は、鮮やかなラベンダー色に染まり始めていた。
 なだらかな丘の斜面に拡がった葡萄ぶどう畑にも、夕闇の影が落ちていく。まだ花の時期には早く、初々しい緑の葉が、栽培用に仕立てた垣根に沿って伸びていた。
 このあたりの土壌は、痩せていて水はけがよい。加えて年間を通じて温暖で雨が少なく、日照時間も長い。ピレネー山脈から流れ込むガロンヌ河の左岸に開けた土地で、灌漑かんがい用の水は豊富だ。
ワインの葡萄を栽培するには、うってつけだった。
 見渡す限り一面の葡萄畑に覆われた丘の頂上には、十七世紀初頭からシャトーを経営する名家、デルランジュ家が所有する古いゴシック様式の城がそびえている。
 尖頭せんとうアーチを描くファサードを二つの塔が両側から抱く壮麗な外観は、大聖堂を連想させた。
 ピンクがかった外壁の色が重苦しい雰囲気をやわらげているが、いまにも甲冑かっちゅうに身を固めた騎士が馬に乗ってあらわれそうだ。
 シャトー・デルランジュは、ボルドーワインの格づけにおいて最も重要とされる一八五五年のジロンド・ワイン格づけでは三級のシャトーだった。
 その後、跡を継いだ城主たちの努力が実り、いまでは愛好家の間で『品質は一級と互角』と評される、美味で個性的なワインを生産している。
 今日は、その古城の若き当主、二十八歳で家督を継いだアベル・デルランジュの、結婚披露パーティーの日だった。

 とどこおりなく御開おひらきとなった盛大なパーティーは、四時間近くに及んだ。おおぜいの招待客がかもし出すにぎやかな雰囲気に、荘厳な城もいつになく明るく華やいで見える。
 うたげを終え、着飾った淑女や紳士たちが、城の前に横づけされた自動車に次々と乗り込んでいく。
 国産のプジョーはもちろん、イタリアのブガッティ、ドイツのベンツ、イギリスのロールスロイス、アメリカのフォード  世界の名車博覧会さながらの光景だ。
 二百名を超える招待客が去った後の大広間には、まだ華やかな余韻よいんが色濃く残っている。
 巨大なシャンデリアがきらびやかな光を落としているその下で、使用人たちは供された食器や残りものの片づけに追われていた。


 この日、ラシェル・ド・ラカーユは、名実ともにデルランジュ夫人となった。
 トゥールーズの男爵家に生まれ育ったラシェルは、二十一歳。
 アベルと知りあう前は、パリのエコール・デ・ボザールに通う画学生だった。
 小さめのうりざね顔は青白く、そのせいで、蠱惑的こわくてきな唇の赤さばかりが目立った。抜けるようにあおい大きな瞳は、不安そうに揺れている。
 彼女はパーティーでの華やかなで立ちのまま、新居となる古城の廊下を、押し黙って歩いていた。大理石の廊下に、硬い靴音が響く。
 落ちついたピンクベージュと白が基調のイブニングドレスは、ラシェルが歩を進めるたびに、しゅるしゅると軽やかな音を立てる。この日のために、パリの人気デザイナー、マドレーヌ・ヴィオネに依頼した、贅を尽くした瀟洒しょうしゃなドレスだった。
 色彩こそ控えめだが、胸の部分の装飾は、幾重いくえにも連なった真珠だ。胸のまんなかと両肩にある真珠飾りを留めるためのバックルには、ダイヤモンドがずらりと並んでいる。
 長さを変えて三段に重なったドレスの裾は、それぞれ手編みの繊細なレースと刺繍ししゅうふちどられていた。ラシェルのブルネットの髪をおさめたキャスケット型の帽子にも、金銀の刺繍とメレダイヤが散りばめられている。
 美しい装いとは裏腹に、極度の緊張と疲労のせいで、花嫁の足はふらついていた。頭の中は、ぼんやりとかすみがかかっている。
 隣には、夫になったアベルがつき添っていた。彼の表情は、晴れの日を迎えた新郎とは思えないほどに硬く、冷たい。

  アベル?」
 不安に駆られたラシェルは、秀麗な夫の顔を見あげる。
 まなじりの上がった、くっきりとした二重の眼は、まっすぐに前を見据えたままだった。
 隣にいる新妻に、愛情のこもったまなざしを送ることもない。普段は柔らかな笑みを浮かべている唇も、きつく引き結ばれていた。
 光沢のあるイブニングコートをまとったアベルの身体は、いつもならば生命力にあふれていて、ラシェルはそばに寄り添うだけで安堵あんど感に包まれた。
 けれど、いまのアベルの全身からは、近づきがたい不穏な気配が放たれている。
 彼は無言のまま、城の東端にある寝室の扉を開けると、ラシェルを突き飛ばすようにして中に入れた。
「きゃあっ!」
 慣れないハイヒールをいていたラシェルは、すぐにバランスを崩す。
 倒れる、床にぶつかる  そう思った瞬間、アベルの腕に支えられ、そのまま、横抱きにかかえあげられた。思わず彼のコートの襟にしがみついたが、ほっとする間もなく、大きな寝台の上に放り投げられる。
  ア、アベル……どうして……」
「僕が気づかないとでも思っていたのか?」
 感情のこもらない機械のような声音に、ラシェルは凍りついた。
 アベルは、そんなラシェルの顎を強くつかみ、無理やり視線を合わせた。靴をはいたまま寝台に上がると、ラシェルの身体をまたいで馬乗りになる。
「縁談を断わり続けていたラシェル嬢が、あっさり結婚を決めたのには、やはり裏があったってことだな。それなのに、きみの心を手に入れたと思い込んで、子どもみたいに浮かれて舞いあがって……つくづく馬鹿な男だよ、僕は  
 見おろすアベルの蒼灰色グレイッシュブルーの瞳には、見たことのない冷酷な険しさが浮かんでいた。自分でもどうにもならない感情に支配されているのが、伝わってくる。
 やさしくて穏やかな男の、二面性  ラシェルは初めて、彼が怖いと感じた。

「あっ、いやっ……!」
 いきなり、ドレスの胸元を開かれた。
 襟ぐりの深いドレス用に作られたブラジャーは、やわらかい布地で、胸を覆う部分はわずかだ。少しずらしただけで、乳房全体が露出する。
 身体つきは華奢なラシェルだが、弾力のある乳房は丸くて豊かだった。下着に押し上げられた二つのふくらみは、いまにもこぼれ落ちそうで、たわわに実った果実を連想させた。
 開かれた胸元を見たアベルが、息を呑んだ。
 その手が素早くブラジャーを押し下げ、ぶるんとまろび出た胸を鷲づかみにした。蹂躙じゅうりんされたやわらかい肉に指先がい込み、粘土のようにかたちを変えられる。
「いやっ、やめて! 痛い!」
 身をよじるラシェルにかまわず、毒を含んだ声が落ちてくる。
「ふぅん……荒っぽいのは嫌いなんだね? なら、あいつ・・・は、どんなふうにしたんだ? もっと、いやらしく触ったのか?」
「な、なにを言ってるの、アベル」
 理知的で気品のある彼の言葉とは思えなかった。
「ラシェル、きみが僕の妻になったのは……あいつ・・・  ギデオンと僕が、おなじ顔をしているからだろう?」
 アベルは冷たく言い放った。
  やはり、気づかれていた……!?)
 ラシェルは息を呑み、眼を見開いた。後悔と絶望で、全身から力が抜けていく。
 けれど、このまま黙っていたのでは、アベルの言ったことが事実だと認めたことになる。
 違うと、誤解だと、はっきり伝えなくては  そうとわかっていても、頭の中は真っ白で、言葉がまるで浮かんでこない。
(どうして、こんなことになるの……?)
 偶然の悪戯いたずらを、心の底からラシェルは呪った。
(ギデオン・アズナヴールと、よりによって今日、結婚披露パーティーで再会するなんて……)

「あ……っ」
 白いレースのパンティとガーターベルトがあらわになる。下着のレースの上から、アベルは遠慮のない手つきで秘所に触れた。
 ラシェルは反射的にももを閉じたが、彼の指は、無理やり割れめに入り込む。敏感な肉の芽を捕らえると、ゆっくりと、絶妙な力加減でね始めた。
「……ここも、触らせたんだろう? どうなんだ? 奴は、どんなふうにしたのか、教えてくれないか?」
 眼を細めていてくるアベルの表情は、眠りをさまたげられた不機嫌な猫に似ている。
 ラシェルには、もう抵抗する気力もなかった。
 好きな男の手で快楽の源に触れられているのに、悦びとは、ほど遠い場所にいる。悪い夢を見ているとしか思えない。
 ギデオンのことで、たしかに、心の葛藤はあった。
 けれど、いまのラシェルにとってのアベルは、恋に落ち、晴れて結ばれた、ただひとりの男性に違いないのだ。
 そのいとおしい、夫となった男からの愛撫が、こんな苦痛に満ちたものになろうとは  

「誤解よ、アベル。たしかに、初めてあなたに会ったときは、びっくりしたけれど、でも――あ、あっ……!」
 上体を倒したアベルは、ラシェルの胸に唇を被せた。乳房をしぼるようにつかみながら、ピンクがかった薄茶色の乳輪を舐め、小粒な野いちごを思わせる突起を口にふくみ、吸い立てる。
「……う、ふう……」
 唇のすき間から、吐息が漏れる。
 アベルは、右乳房の愛撫が済むと、もう片方に移った。
 ラシェルの脚の間にある花芯を撫でながら、空いたほうの手では、さっき口にふくんだばかりの乳房を捏ねるように揉む。固くしこり始めた乳首を舌先で弾かれ、甘噛みされると、くすぐったさに、じん、とした痺れが混ざった。
 やがて、甘いさざ波のような悦楽が、ラシェルの下腹にやってきた。
「あっ…あぁ  
 鎖骨の上を滑る、アベルの髪の感触が心地いい。
 ラシェルはそっと薄目を開けて、自分にむしゃぶりついている男を盗み見た。彼の灰色がかった蒼い眼は、欲情のためか、きらきらと濡れて輝いている。
  美しい。愛おしい。わたしは、間違いなく、彼を愛している……)
 アベルの金髪に近いアッシュブラウンの髪は癖がなく、襟足はすっきりと短く揃えられている。せつなくなったラシェルは、そっとアベルの頭をき抱き、乱れた長めの前髪を指でいた。
 そのとき、彼の冷たい瞳が、ひたと、こちらを見据えた。

「眼を閉じていれば? 僕の声はギデオンより少し高いけど、顔を見なければ、どちらかわからないはずだ。あいつに抱かれていると思えばいい。ああ、そうだ……目隠しをしてあげようか?」
 聞くにえない、自虐的な言葉だった。
 アベルがどれだけ傷ついているか、絶望しているか  ラシェルは、思い知らされた。
 二人で築きあげてきたすべてのものが、いま、波にさらわれる砂のように崩れていく。
 夫の顔を正視するのがあまりにつらくて、ラシェルは両手で顔を覆った。
 膝の裏をつかまれ、思いきりひろげられる。下着の中で、ももの間の果肉が、ぱっくりと口を開けるのがわかった。
 淫らに開いた柔らかい果肉に、布の上から唇が押しあてられ、熱い息を吹きかけられる。
「ひ……っ」
 果肉の襞に歯を立てられると、ラシェルは小さな悲鳴を漏らした。くり返し、こするように甘噛みされる。
 快感よりも、不安と、大きく開かされた鼠蹊部そけいぶの痛みのほうが勝った。
「……やめて、お願い……」
 アベルは容赦するつもりはないらしい。
 もはや愛の行為というより、凌辱りょうじょくに近かった。ラシェルの意思は、完全に無視される。
 けれども、陰核をむアベルの指が胸の尖りをいじりだすと、ラシェルはまたたく間に恍惚感に襲われた。


………………続きは電子書籍でお楽しみください。




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